スペシャル対談!オープンな経営で切り拓く未来(1/3)

ダイヤモンドメディア株式会社をご存知でしょうか?
不動産業界向けのWEBソリューションを提供しており、今大注目の不動産ソリューションカンパニーです。
更にこちらの会社、ホラクラシー経営をしていることでも有名なんです。
ホラクラシー経営のダイヤモンドメディア株式会社と、バリフラット経営の株式会社ISAO。

・・・シ、シンパシーを感じる。

ということで、日本におけるホラクラシー経営の第一人者とも言える武井社長をお招き。
弊社代表の中村との対談が実現しました!
それぞれの会社の経営者は、何を思いここに行きついたのか。深く話していくと見えてくる、お互いの違いとは?!
ホラクラシー経営の先駆者たちが語り合う、21世紀の会社のカタチ。
全3回でお送りします。

 

第一回「ホラクラシー経営とバリフラット経営」

 

まずはお互いの組織について

中村
今日はよろしくお願いします。
まず、お互いの組織の紹介をさせていただいて、その後従来型の組織とホラクラシー組織、バリフラット組織の違いを話し、お互い学びあえればと思います。ISAOはIT業界の裏方としてB2Bでシステムや運営のリソースを提供したり、サービスをクライアントと一緒に作ったり、自社サービスを作ったり、ITの領域で多岐にわたる仕事をしています。
元々はCSKとSEGAのジョイントベンチャーから始まり、2010年から豊田通商グループの一員となっています。
売上の規模は約37億円、営業利益は約4億5,000万、社員数はアルバイト含めて約250人です。

武井
ダイヤモンドメディアは不動産フィンテックを生業にしており、不動産流通のB2B2BというマニアックなIT事業をしています。
顧客は不動産仲介会社さんや不動産管理会社さん、不動産投資家、個人オーナーなどです。
設立は2007年、稼働は2008年からで、不動産領域に特化し始めたのは5年ほど前からです。
人数は正規雇用が16、17人、フリーランス等が10人位で副業も自由です。
売上は2億ほどで、外部資本を入れずに黒字経営を続けており、出そうと思えば利益は5,000万ほど出ますが、現在は投資フェーズにあり、営業利益は1,000万ほどに意図的にしています。
中村
具体的には不動産業界にどんなサービスを提供しているのですか。
武井
説明が非常に難しいのですが……。
不動産仲介会社向けにCRM(Customer Relationship Management)のためのWEBマーケティングシステムを提供しており、それが主力ビジネスで売上の7割程度を占めており、4名がそのサービスを担当しています。
残りのメンバーはみな新規事業を担当しており、1つは不動産管理会社向けのリーシングマネージメントシステムです。
このサービスは、日本で弊社しか持っていない独特なサービスで、不動産管理会社が行っている業務を管理業務と募集業務に分けて定義し、今までカバーできなかった領域にフォーカスしたサービスになっています。
簡単に言うと、マーケティングオートメーションとSFA(Sales Force Automation)が合体したようなサービスで、不動産管理業務に特化しているものです。
セールス/マーケティングの部分を可視化して不動産管理会社の「募集業務」を分析できるサービスです。
2つ目が投資家向けのもので、それが自分たちを不動産フィンテックといっている所以なのですが、不動産資産は現金や他の金融資産と違い現物資産なのでネットでの売買が難しいんですね。
中古車と一緒で実際に物を見てみないと状態が判断できないんです。
であるがゆえに、仲介業者が入った相対取引が基本で、株のようにマーケットで売買できないんです。
様々な業界においてIT改革は中間業者やマージンを破壊することが多いですが、先程の理由から不動産業業界はそれが難しいので、我々は中間業者も含めて流通を最適化させたいなと考えています。
そこで、我々は中間業者が持っている稼働率などの情報を集約し、現在提携している会社の会計アプリと繋げて頂ければ、投資家さんが他の金融資産と同じ画面で不動産資産をマネージメントできるサービスを開発しています。
中村
な、なんとなくわかりました。(笑)
非常に情報がクローズされた業界で、いかに情報をオープン化するかという事業ですね。
武井
まさにその通りで、情報をオープン化すればその市場が勝手に健全化していくであろうと考えています。
そしてこの考え方はダイヤモンドメディアの経営スタイルにも通じるものがあります。
中村
いい感じで経営スタイルの話に繋いでいただきありがとうございます。(笑)
そろそろ組織に関する話をしましょうか。

ホラクラシー経営によって理不尽な権力をなくす

中村
ダイヤモンドメディアさんはかなりぶっ飛ばしたオープンな「ホラクラシー経営」を実現されているということなのですが、まずは簡単にその経営スタイルをご説明いただいてもよろしいですか。
武井
元々は天外伺朗(土井利忠のペンネーム)さんが作られた「人間性経営」という言葉で自分たちの経営を呼び、ブログも書いていたのですが、全然広まらないので最近は流行りに乗っかって「ホラクラシー経営」と言っています。(笑)
ブログのタイトルも「ホラクラシー経営」に変えたらアクセスが10倍になりました。(笑)
やっていることの中身はまさにISAOさんの経営と一緒だなと感じていますが、我々のほうが規模も小さいですし突き詰めやすいというのはあるかもしれません。
最近は資本政策にもその考え方を導入しようとしています。
中村
それはどんな取り組みですか?
武井
ホラクラシーの考え方は、基本的には理不尽な権力をなくす取り組みだと考えているのですが、社内の役職などの権力を取り除いていった結果、株主の権力にも手を付けようとしているのが現状です。
現状僕が株式のマジョリティを持ち、創業メンバーの2人と今の役員がそれぞれ株を持っているのですが、株を持っているがゆえに権力を持っていると思われるのもイラッとするので(笑)、新たなスキームに移行したいと考えています。
中村
新たなスキームとはどういうものですか?
武井
現在検討中なのですが、持株会を作り、そこに議決権のある株式を持たせ、それ以外の株は議決権なしとしようかと考えています。
そうすれば僕が仮にいなくなったとしても経営の状態を維持できるかなと考えています。
中村
なるほど。
ただ、(株式の)シェアは引き続き持たれますよね。
武井
はい、シェアは持ちますが議決権はないので、経営に対する権力はなくなりますね。
実現の目処も見えてきたので、年内か来年にはやろうと思っています。

従来のヒエラルキー型組織に対する違和感

中村
僕も基本的には役職や上下の関係といった意味のない権力をなくしていきたいのですが、従来型の「ヒエラルキー組織」とは異なることを何のためにやっているか聞かれることがよくあります。
武井さんは何のためにやっていると認識していますか。
武井
何のためなんですかね。(笑)
我々からすると、「それしかないじゃん!」と思いませんか。
中村
ヒエラルキー型の組織に違和感があるケースは多々ありますね。
武井
そうですね、うちの会社もかれこれ9年くらいこのスタイルで経営していて、僕自身も普通の組織に入ったことがないのでわからないんですが、コレの方がいいに決まってるじゃんっていう感じです。
中村
ヒエラルキー型の組織で働いたことがないんですね。
武井
過去のバイトくらいですかね。
でも、自分より仕事ができないやつに立場で上から指図されるのってムカつきますよね。(笑)
肩書がどうとかじゃなく、できる人がやればいいじゃんと思います。
中村
なるほど。
僕は、ヒエラルキー型の組織構造にはムダが多すぎると常々感じていました。
組織に階層があるために無駄な承認やレビューが行われたり、報告のための報告が行われるなど、生産性が非常に損なわれていると。
僕はヒエラルキー型の組織で社会人として育ちましたが、周りを見渡すとパワフルな人材はヒエラルキーなど気にせず普段仕事をドライブしているのにも関わらず、仕事を次に進めるためには上司のハンコを貰わなきゃいけなかったりする場面をよく見かけました。
武井
絵に描いたような大企業加減ですね。(笑)
中村
僕はISAOの社長をする前はヨーロッパにいたのですが、欧米の会社のほうが圧倒的にデシジョンメイキングが速い。
それはなぜかと観察していたところ、組織が非常にフラットで、現場社員にムダなレポートを求めない会社が多かったんです。
そういう会社に日本企業が負けていくのを目の当たりにし、意思決定スピードの重要性を再認識しました。
意思決定スピードを上げるためには何をしなければいけないかと考えた際、ムダなヒエラルキーが邪魔をしているということに気が付き、それを組織から取り除こうと考えました。
また、例えば年長者からの「重要でない資料作成依頼」といった意味のない作業も、ヒエラルキーをなくして組織をフラットにしてしまえば、なくなるんじゃないかと考えました。
まとめると、「ビジネスで勝つために意思決定速度を上げる」、「組織内の非効率な作業をなくし、気分良く楽しく働く」。
この2点ですね。
この考え方で今ISAOの経営を行っています。

倒産してから問い続けた「仕事ってなんのためにするんだろう」

武井
僕はダイヤモンドメディアの前に1社起業しているのですが、すぐに潰れてしまったんですね。
4人で起業した会社で全員が役員だったのですが、借金までして極貧生活をしながら成功を夢見て頑張ったのに、全く報われませんでした。(笑)
その時に僕は「会社ってなんのためにあるのかな」「仕事って何のためにするのかな」と深く考えました。
仲間に借金させてまでやりたかったことに意味はあったのかと。
その時に自分のエゴで会社を経営してはいけないと気づき、「意味のある経営」をしたいと考えるようになりました。
中村
「意味のある」というのは、「意味のある事業」という意味合いですか。それとも「意味のあるチーム、場所」という意味合いですか。
武井
両方ですね。
企業にとってのステークホルダーは株主、社員、自分自身、パートナー、顧客、地域社会など色々ありますが、それぞれへの貢献のバランスが大事だと思っています。
関わってくれるすべての人にとっていい会社を作りたく、それを経営者の男気で実現するのではなく、仕組みとして再現性ある形で実現したいと考えています。
なので、ダイヤモンドメディアを立ち上げた当初から、給料はみんなの合意で決めようとか、上司部下のいない会社にしようとか、色んな取り組みを試してきました。
「会社はどんぶり勘定がちょうどいい」を真に受けて試していたら会社が潰れそうになったこともあります。(笑)

今なら笑って話せる荒れに荒れたISAOの黒歴史

武井
では、逆にISAOさんがなぜバリフラット経営にたどり着いたのかを教えてもらえますか。
中村
バリフラット経営はオープンとフラットが鍵ですが、まずはオープンに関して事例をお話します。
僕は2010年にISAOに来たのですが、その時の組織は社長、役員、事業部長、部長、グループ長・・・と、ものすごいヒエラルキーがあり、正社員が80人程度しかいないのに役職者が22人もいました。
人を管理するという直接的に利益を生み出さない仕事をしている人がたくさんいて、かつ事業の調子も悪い。
7事業中6事業が赤字で、黒字事業は1つだけ。
年間で6億2,000万円の赤字会社からのスタートでした。
武井
非常につらい状況ですね。
中村
はい、かなり。(笑)
人事も非常にクローズドな中で行われ、当時の偉い人が自分の感性で人への采配を行っている状況でした。
僕は外様だったので内部のことがなかなかわかりませんでしたし、誰も能動的に僕に情報をくれませんでした。
なんとか情報をかき集め人員と年収のリストを作ってみたのですが、それはもう考えられないようなひどい状況になっていました。(笑)
なぜこうなったのかを突き詰めてもしょうがないので、どんな人がどんな年収だったら適正なのかを当時のマネジメント層を集めて話し合いました。
長い議論の末に10個のランクを作り、すべての社員をそのランクに当てはめました。誰が実際にいくらもらっていたのかは全く考慮せずに。
しかしいきなりそのプランを実行すると、300万くらい年収が下がってしまう人もいたため、2年間の調整給は設けることにしました。
そして、その新等級プランを限定的に社内公開しました。
武井
反応はどうでしたか。
中村
完全に荒れましたよね。(笑)
なので全社公開は、事態が少し沈静化してからすることにしたのですが、完全にオープンにするまでは2、3年かかりました。
やはり、古い組織から情報をオープンにして新しい組織に生まれ変わるには、ものすごいパワーが必要だとその時に改めて感じました。
武井
非常に面白そうですね。(笑)
そういうの好きです。
中村
続いてフラットに関してですが、2010年に6段階ほどあった組織階層を2014年には3段階にしました。
情報もSNS利用でかなりオープンになっていたのですが、そこからさらに完全なフラット組織であるバリフラットに移行したタイミングは、外部に出ていた優秀な人材が社内に戻ってくる時にどんなポジションで戻すのか話し合っていた時の事でした。
人を戻すために新たな役職を作るのは、なんかナンセンスだよねということで・・・役職自体を廃止することにしました。(笑)
ネーミングもアメーバ経営やプロジェクト制経営など、色んな案があったのですが社内公募した結果「バリフラット経営」となりました。
武井
抵抗勢力っていなかったんですか。
またはそれがきっかけで辞めていった人とか。
中村
バリフラット化するタイミングではいませんでしたが、2010年からの流れの中で辞めていった人は結構います。
権力は情報と決済権をベースに生み出されているので、情報のオープン化と組織のフラット化は権力の剥奪、放棄と同義であり、それをよく思わない人はやはりいましたね。
交際費なんかも完全に自己決済禁止にしたので、「考え方が合わない」とわけのわからないことを言って辞めていく人なんかもいました。(笑)
武井
それは、考え方が合う合わないじゃありませんね。(笑)

続きは次回。
第二回は「本音で話す給与と評価」をお送りします。
生々しい部分まで赤裸々に語っちゃう?!

対談のお相手

武井浩三さん

ダイヤモンドメディア株式会社 代表取締役 共同創業者

アメリカ留学、CDデビュー、起業、倒産、M&A、再起業等、経験の濃さもトップクラス。
ホラクラシーという言葉が生まれる以前より、ホラクラシー型の経営を実践し続け、ホラクラシー経営の日本第一人者として講演や組織支援を行っている。

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